日本ではTOEICが異様と言っていいほどもてはやされています。今回の記事では、なぜこのような事態になっているのか、どのような背景があるのかといったことを、考察してみました。
なぜTOEICは日本で神格化されるのか
なぜTOEICの神格化がおきるのでしょうか。
そもそも、採用側がTOEICのことについてよくわかっていない
日本企業、特に大手は入社時にTOEICのスコアをESや履歴書と一緒に提出させることが多いです。にもかかわらず、日系の企業の業務で英語を日常的に使うことはほとんどありません。
国外とのやり取りが発生するとしても、社内通訳者や翻訳者などの専門家を挟んで行うことがほとんどです。ふつうのサラリーマン人材として入ってきた人間が英語を使う、というのは実質的にないに等しいと言っていいでしょう。
なぜ使われることのない英語力の提示を求めるのかと言うと、たぶん惰性というか、慣習なのではないでしょうか。採用する側もTOEICのことをよくわかっておらず、他もそうしてるからとりあえずスコアの提出を求めている、という事態になってそうです。別にTOEICのスコアを求めることに何らコストは発生しませんからね。
メディアの煽りが強すぎる
運営元であるETSが受験を促進しているのはもちろん、大手英会話スクールや学習参考書の出版社、最近では英語学習コンテンツを提供するブロガーやYouTuberまで、TOEICを受験することを煽りまくっています。
もちろん、これらの発信はすべてサービスや教材の販促活動の一環であり、本当に必要かどうかは人によります。ブロガーやYouTuberの場合はアフィリエイトプログラムに参加することでこの販促活動に加担しており、SNSが浸透するごとにこの傾向は顕在化しています。
上記2つがあいまってバブル化する
このような事態もあって、
- 大学や企業が受験者になんとなくTOEICのスコアを求める
- 「TOEICのニーズが高まっている!」という世間の論調が激しくなる
- 教材、サービスが売れて、バブリー状態に
というサイクルになります。本当にいるかいらないかわからないものが求められている結果、異様な盛り上がりになっているわけです。
TOEICの実際
では、TOEICの実際のところはどんな感じなのでしょうか
TOEICは英検と似たようなもの
勘違いをしている人も結構多いのですが、TOEICはグローバルスタンダードの英語系資格ではありません。
確かに、英検などとは異なりTOEICの市場は世界に広がっています。ですが、実質的に日本と韓国の受験者が全受験者の大半を占めており、ほぼこの2国のための英語試験になっています。もともと日本がETSに開発を委託してできたテストがTOEICなので、実質日本発のテストになっています。
TOEICのスコアは海外では通用しない
そのため、TOEICのスコアを海外の大学や企業で求められることはほとんどありません。実際に求められるものはTOEFLやIELTSなどの資格試験のスコアです。そして、これらの試験の難易度はTOEICとは比べ物になりません。
英語に精通している人ほどTOEICのスコアを信用していない
そして、英語に精通している人ほどTOEICのスコアを信用していません。900点台でも英語が使えない人もいるので、実際のところどうなのか、というのは技能を確認しないとわからないのです。
英語系人材を求める企業はスコアではなく、スキルを重視する傾向
高度な英語力を駆使できる即戦力人材が欲しい、という企業は、TOEICではなく、技能試験を課して受験者のスキルを判断することがほとんどです。TOEICなどのスコアはあくまでも名刺のようなものとして機能します。
例えば、翻訳会社に応募すると「トライアル」と呼ばれる翻訳の技能試験が課されることがほとんどです。本当に使える人材どうかは、試してみるのが一番手っ取り早く、合理的だということです。
さいごに
TOEICバブルがいつまで続くかはわかりませんが、少なくとも今現在までこの傾向は顕著です。
自分が本当にしたいことはTOEICの点上げなのかスキルアップなのか、そのような点をきちんと把握すると、いいかもしれません。
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